当院の不整脈の診療

不整脈の症状は様々で、診断が難しいこともあります。一口に不整脈といっても脈が速くなるものから遅くなるもの、不規則になるものなど種類があり、症状は多様です。
動悸やめまいなどよく知られているものから胸痛や吐き気、失神など他の病気と紛らわしいものもあります。
発作的に起こるものではさらに発見が難しく、過労やストレス、自律神経系の乱れからくる症状と考えられ見過ごされている場合もあります。
当院では通常の循環器検査以外にも、ホルター心電図、遅延電位心電図など不整脈に特化した検査を外来で行います。また、入院して薬物やカテーテル刺激で不整脈を誘発するなどより詳細な検査を受けることが可能です。

近年の高齢化に伴い、患者数も増加しています。充実した老後を過ごすために不整脈のマネージメントは欠かせないこともわかってきました。高齢化社会に突入し、不整脈を持っている方の割合も増加傾向です。
特に心房細動という不整脈は加齢に伴い増加し、それ自体は致命的ではないので有病率は上昇傾向です。自覚症状は少ないこともあり、気づかずに過ごしている方も多いと言われています。
しかし、心不全や脳梗塞といった生命に関わり、生活の質を大きく損なう疾患の原因になるので、早期発見と対処が望ましいです。
心房細動が心配な方、心房細動と言われたことがある方はぜひご相談下さい。

不整脈の治療について

不整脈の治療内容は大きく分けて以下の3つになります。 それぞれの領域でここ10−20年で大きな進歩が見られ、患者の方により効果的で安全な治療を受けて頂けるようになりました。

(1)内服治療

不整脈を抑える薬(抗不整脈薬)も改良され、より有効性安全性の高いものが増えています。
また不整脈からの脳梗塞を予防する薬(抗凝固薬)も予防効果が高く出血を起こしにくいものが使われるようになってきました。

(2)デバイス治療

通常のペースメーカーの普及や小型化は言うまでもなく、危険な不整脈を治療する機能(植え込み型除細動器)や心不全の治療機能(両心室ペーシングを行うCRT)を備えたデバイスが導入されました。

(3)カテーテルアブレーション

不整脈を薬で抑えるだけではなく、カテーテルで不整脈の原因を焼灼するアブレーションが行われ、根治治療ができるものが増えています。
病態によって全身麻酔下でのアブレーションも行なっています。

当院では患者の方の状態を評価したのち、上記の中から最適な治療法を選択しお勧めしております。

パルスフィールドアブレーション

当院では、心房細動の治療において高周波によるアブレーション、もしくは 冷凍バルーンアブレーション(クライオアブレーション)のいずれかを患者様に適した治療方法を選択し、治療を行って参りました。今回、2024年9月より日本国内で使用開始可能となった、パルスフィールドアブレーションを当院でも導入いたしました。

パルスフィールドアブレーションを行う最大のメリットは、従来のアブレーション方法で問題視されてきた合併症を軽減できることです。今までは、カテーテルアブレーション後に食道関連の有害事象や肺静脈狭窄、横隔神経損傷になることが低い確率でありました。今回新たに導入されたパルスフィールドアブレーションは、カテーテルの電極間にパルス状の電圧をかけることでパルスフィールドを形成し、心筋組織のみ細胞死させる方法です。心筋組織のみに影響を与えるため、食道や横隔神経などに影響を与えることなく治療が可能となります。

今後は、パルスフィールドアブレーションを含めた複数の治療方法で、患者様にとってより安心・安全な治療を提供していきます。

パルスフィールドアブレーションの治療イメージ
肺静脈狭窄となった症例

クライオアブレーション

クライオアブレーション(冷凍バルーンアブレーション)とは

クライオアブレーションは不整脈を治療するために、心臓の筋肉内を伝わる電気伝導の異常をカテーテルで治療する、非常に難易度の高い治療です。
治療方法は、-60℃まで心筋組織を冷凍することで細胞障害を引き起こし、電気的興奮や伝導を生じないようにさせる治療法です。心房細動に対する治療では、高周波と同様に、肺静脈と左心房間の伝導を遮断することを目標に行います。
バルーンカテーテルを用いて、肺静脈を塞ぐように押しつける要領で、肺静脈周囲を冷却、隔離します。

クライオアブレーション(冷凍バルーンアブレーション)

対象となる疾患(適応・除外基準)

心房細動による自覚症状が強く、抗不整脈薬でも発作が抑制されない方が対象です。
心房細動は発作性と持続性とに分類されます。発作性は長くても1週間以内に停止するもので、持続性は1週間以上続くものです。
クライオアブレーションは、この「発作性心房細動」「持続性心房細動」が適応となります。
※肺静脈の形態異常(共通管など)は難しい場合があります。そのような方は高周波アブレーションによる治療が選択されます。

全身麻酔で痛くないアブレーションを行います

「治療の苦しみを減らすこと」は医師・華岡青洲の精神を継ぐものであり、当院では積極的に全身麻酔にてアブレーション治療を行っております。
心臓を高周波で焼灼すると、焼く場所によっては激しい痛みを自覚し「アブレーション治療は痛い」「寝ている間に手術は終わって欲しい」とほとんどの患者さんに言われます。
全身麻酔で行う目的は「患者さんに痛みがなく、手術を楽に受けられる」、人工呼吸器により呼吸が安定し「心臓の上下運動が少なく、カテーテルの固定が容易で、治療効果が高まり、合併症予防にもつながる」などです。

アブレーションの全身麻酔は麻酔専門医が担当しております

日本不整脈心電学会によると、心房細動のカテーテルアブレーションを実施している病院のうち、麻酔科医が全ての症例の全身麻酔を担当している病院は全体の1.5%しかありません。
しかし、当院では患者の方が安心して心房細動カテーテルアブレーションを受けて頂けるように、全ての症例の全身麻酔を麻酔科専門医が担当しております。
当院の心房細動カテーテルアブレーションは1~2時間で終了することが多く、全ての患者の方がカテーテルアブレーション終了後10分以内に麻酔から覚醒しております。
心房細動カテーテルアブレーションを受ける患者の方の中で、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を併発している方は、少なくありません。睡眠時無呼吸症候群のうち上気道閉塞が原因と考えられる閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は心房細動の30-40%を占めると言われており、OSAの患者の方がカテーテルアブレーションを受ける際は、カテーテルアブレーション中の気道管理や呼吸管理が難しい場合があります。

しかし当院では、気道管理や呼吸管理は麻酔科専門医が行っており、安全なカテーテルアブレーションを提供することが可能となっております。
以上により、睡眠時無呼吸症候群またはその疑いがある方は、安全に心房細動カテーテルアブレーション治療を受けられることをお勧めいたします。
また、心房細動に加えて、未成年の方のカテーテルアブレーションにおいても、全身麻酔を提供しております。

麻酔科 診療部長 新井田 周宏
麻酔科 診療部長 新井田 周宏

意識を失う場合・・・

突然、一時的に意識を失うことを、医学的に失神と呼びます。
その失神の原因を調べることが可能な検査として「ヘッドアップティルト試験(HUT)」があります。

失神の原因の1つに自律神経の調節異常があり、その異常が起こりやすいかどうかを確認する検査を行います。
横になった状態から立った場合、血液は重力に従って足の方に移動します。
その時、自律神経の調節異常がある場合には、血圧・脈拍の調節がうまくいかず、一時的に脳に栄養を送る血液が減少して失神が起こります。
この検査装置では、患者さんに検査台の上に横になってもらい、検査台を起こして他動的に傾斜をつけることで自律神経の働きを検査します。

頭の検査を行ったが、失神の原因が不明な場合など、一度当院にご相談下さい。

※起立練習傾斜ベッドチルトテーブル装置:K1430ML(ミナト医科学株式会社)
※起立練習傾斜ベッドチルトテーブル装置:K1430ML(ミナト医科学株式会社)

たまに動悸やめまいを感じる・・・

日常生活の中で、たまに「動悸」や「めまい」を感じる・・・
たまに感じる程度の症状ではあるが心配になり病院へいざ診察室に入ったものの症状が消失している・・・と、言うことがあります。そういった症状をとらえる検査に「ホルター心電図」があります。

ホルター心電図

「ホルター心電図」とは24時間または最長2週間全ての脈を記録します。記録した脈を解析し、結果がたまに感じる「動悸」や「めまい」が不整脈によるものかを調べることができます。
「ホルター心電図」は胸に電極を3ヶ所貼付します。
機器は防水タイプであり装着中は日常生活を普段通りに送ることができ、シャワーや10分程度の半身浴も可能です。

不整脈の知識を備えた多職種のスタッフが診療に携わっています

上記のように多岐に渡る診断治療を行うために、当院では不整脈の専門知識を備えた不整脈専門医が常勤しております。また、循環器及び不整脈の経験を重ねた看護師が外来と病棟に勤務しております。
他外来での検査やデバイス/アブレーション治療に携わる放射線技師、医療工学士(Medical Engineer)、生理検査技師も複数勤務しており、チーム医療で取り組む体制を目指しています。